山上の要塞
1999.3.13
夜が深まるにつれて、バスの車内はとても寒くなっていった。それ
というのも、バスの運転手が窓を全開にしているからだ。運転席のすぐ後ろにいる私には風がもろにあたる。耐えきれずに寝袋を使うこと
にした。まさかバスの中で寝袋を使うとは思わなかった。
途中、アジメールという街で大量に人が降りたので、一般席に移ることができた。それからはゆっくりと眠ることができた。
早朝、ジャイプルに到着した。ジャイサルメールのホテル従業員に紹介されていたホテルにまずは行き、チェックインした。ドミトリー
で60ルピー。ドミトリーといっても廊下にベッドを4つ置いただけで、厳密には部屋ではない。廊下だから、当然のようにベッドのそば
を一般客や従業員が通り抜けていく。私の隣のベッドでは若い日本人女性がそんなことなど気にもせず寝ていた。インドで出会う日本の女
性はたくましく感じる。
廊下にベッドを置いただけ |
今晩の宿が決まったら早速行動開始。日本への帰国の日も迫ってき
たので、そろそろお土産なども買っておきたい。ジャイプルというと、宝石が安く手に入る町だというので、まずは宝石屋さんに行ってみ
た。こればっかりは偽物をつかまされてはしかたないので、『地球の歩き方』に載っている信頼できそうなお店に行ってみることにした。
シルバー&ルビーのネックレスを購入。しかし、保証書をもらわなかった。本物かどうか実に疑わしい。
次に行ったのがアンベール城。ジャイプル市内からは11kmの距離にあり、バスで3ルピー。いいかげんインドの建物めぐりにも飽き
てきた気もするが、美しい城ではあった。
それよりも、アンベール城のさらに上、山の頂上にあるジャイガール要塞の方がすばらしかった。城壁も大砲もかなり奇麗に残ってい
て、眺めのいいところだった。ただ、そこまで行くのは疲れた。20分くらいは歩いただろうと思う。
バスでジャイプル市内に戻ってきて、そこからホテルまではバザールをぶらぶら歩いたり、普段は観光客があまり通らなさそうな裏道を
通ることにした。観光客が少ないということは、観光客めあてのしつこいタクシーやリクシャーも少ないということなので、落ち着いて歩
く事ができた。レストランにしろ、雑貨屋にしろ、洋服屋にしろ、大通りに比べて値段も安いようだった。しつこい客引きも少なかった。
鉄工所、ガラス加工店、モーター屋、その他何を扱っているのかわからないお店などがあって面白かった。
と、そんなことをやっていたら、道に迷ってしまった。どっちがホテルなのか、今どこにいるのか、どの方角に向いているのかさっぱり
わからなくなった。いやはや困った。英語を理解できる人が周りに少なかったこともあって、面倒くさくなってリクシャーを使うことにし
た。
何人かのリクシャーと交渉して、20ルピーで交渉成立。20ルピーといえば、5kmぐらい走った場合の相場だ。そんなにホテルから
離れてしまったのだろうか? もっと近いと思うのだが、現在地すらわからないので強気の態度にでることができない。そんなわけで仕方
なくオートリクシャー20ルピーで妥協した。
いざ、オートリクシャーが走り出したのだが、運転手はちっともスピードを出そうとしない。時速10km/hぐらいだろう。もっとス
ピードが出るはずなのに、ちんたら走って私と話をしようとする。
「どこから来たのだ? 東京? 大阪?」
「結婚してるのか? ガールフレンドはいるのか?」
「靴を交換しないか?」
「明日、町をガイドしてやろうか? 50ルピーでどうだ?」
そんなことはどうでもいいから前を見て走ってほしいし、もっとスピードを出してほしい。いくら私がそう言っても彼はおかまいなし
だった。私は怒るのが苦手だ。
そうこうするうち、1kmも走っていないだろう、オートリクシャーはホテルに着いてしまった。実はものすごく近い距離だったのだ。
だまされた! といってもこれは自業自得だ。仕方ない。
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