密造酒で乾杯!

1999.3.10

 昨晩、アルン少年に注意されたことがあった。
「荷物(私のリュックのこと)は頭の近くに置いておいた方がいいよ。夜は犬がやって来て、中身を荒らしてしまうからね。」
 朝、アルンの言ったことが本当だとわかった。私は犬同士の喧嘩の騒がしさのために目を覚ました。3匹の犬がまわりをうろうろしてい る。布団のまわりには犬の足跡だらけ。鳥の足跡もたくさんある。私の布団の所で足跡が途切れているところを見ると、もしかしたら私の 上を歩いていたのかもしれない。それでも、荷物は荒らされていなくて安心した。
 朝食は、チャーイ、いちごジャムトースト、ゆで卵、ビスケット。三食ともカレーでなくてホッとした。朝食を作っている最中に、近所 の村の女の子が一人やって来て、ちょこんとそばに座っている。村が近いから犬も出没するらしい。食事は、4人と3匹分作られた。なか なかおいしい。

 8:30出発。昼前には、クーリー村とクーリー砂丘というところ に着いた。村の人たちはとっても親しみやすかった。ナランには「村を適当に見てまわるといいよ。」と言われたが、村の人と喋ってばっ かりで、それほどたくさんは見てまわらなかった。石を組んで作った家が点在し、家の中では羊の毛を刈ったりしている。


羊を飼っている村の男達

 砂丘につ いては、ナランいはく「最も大きな砂丘だよ。」※12ということだが、想像していたよりは小さい。とりあえず 記念写真を撮ろうとするが、生えている木を入れずにフレームにおさめるのがけっこう難しい。地平線までずっと砂丘が続く景色を見てみ たかったが、それはどうやら無理なようだ。それでも、風紋もきれいに残っているし、砂漠の気分を味わうことはできた。
 そして、もう一つ残念だったことがある。砂丘の近くにアスファルトの細い道ができていた。むむっ、車の通れる道があるということ は、わざわざラクダに乗ってこなくても、ジープとかに乗ってくることができたのではないか?と思ってみたりもしたが、それじゃあ気分 が出ないだろう、ということで納得した。

 ナランはお酒が大好きだった。昨日もそうだったが、お酒がなくなると村でお酒を買う。そこらへんに落ちていたペットボトルを拾っ て、村の家の中に入っていき、それにお酒を注いでもらって戻ってくる。しかも、必ず私に、
「今晩はパーティをしよう。パーティにはお酒が必要だ。お酒代くれないか?」
 と言ってくる。「今晩・・・」と言っているが、昼ご飯のときにもちゃんとお酒を飲む。チップ代わり と思って少しばかりルピーをあげると、ペットボトル(1.5リットル)いっぱいのウィスキーを買ってくる。飲む前に必ず焚き火の中に 少しお酒をふりかけ、焚き火が大きく燃え上がり、ナランが「Oh! Good ウィスキー!」と言う。飲んでみると確かにアルコール度数が高そうだ。私は水で割らないと飲むことができない。私が水をたくさん注ぎすぎると、
「だめ、だめ!もっと飲め!」
 といってさらにウィスキーを注いでくる。こんなの飲みすぎたら、それほどお酒に強くない私は大変なことになりそうだ。
 それにしても、以前から不思議に思っていることが一つあった。なぜ瓶詰めのウィスキーではないのだろうか。なぜいつもペットボトル に注いでもらっているのか。その理由が、今日の昼ご飯の時に明らかになった。
 この日はアスファルト道路の近くで昼休憩をしていた。普段はめったに車は通らないのだが、遠くから車の音が聞こえてきた。するとナ ランが、
「アルン!ウィスキーを隠せ!向こうの木の下に隠しておけ!」
 とアルンに命令した。おや、なんだか緊迫した雰囲気になっている。アルンは10mほど離れた茂みの中にウィスキーを隠しに行った。
 しばらくして、何事もなくジープが通り過ぎた後で、私は気になって質問してみた。
「どうしたの?」
「警察にウィスキーが見つかると危険なんだ。だから隠したんだよ。」
「どうして?」
「このウィスキーは瓶に入ってないだろ。ペットボトルに入っているよね。さっきの村で作られたものなんだ。見とめられていないお酒な んだよ。」
 見とめられていないお酒…警察に見つかると危険…つまり密造酒ということか…。そう考えると納得できる。ふと、私は最近の新聞記事 を思い出した。ロシアや中国では質の悪い密造酒が出まわり、密造酒による死者が大量に発生しているという…。私は怖くなってきた。さ ほどお酒に強くない私が飲みすぎるのは危なそうだ。

 砂丘を見れたことについては、その砂丘の小ささのために、大満足しているというわけではなかったが、夜の星の数については大満足で きた。今日は雲一つない晴天だった。昨日と同じく夜空を見ながら砂の上で寝袋に入って寝た。カルカッタや今まで訪れた都市では、空気 が汚れていたのかあまりたくさんの星を見ることはできなかったが、ここは全然違った。さすが砂漠!空気も綺麗で、灯りも周りにはまっ たくなく、星の数がはんぱじゃない。実は星ってこんなにいっぱいあったのか!と驚いてしまった。

※ 注
(12) 今回のキャメルサファリでは最大という意味です。私は行きませんでしたが、サム砂丘というのが、外国人の行 ける範囲では最大級(10kmほど)だそうです。


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