またもや強行軍
1999.3.7
バスは午前0時ぐらいにジャイプルに着いてしまった。夜に宿探し
をするのは得策ではない。カルカッタでの苦い経験が思い出された。いざとなったらバス停で一晩あかすという手もある。しかしながら、
リクシャーに連れられ、それなりの宿Hotel
Bombayが見つかった。ダブルルーム一泊200ルピー(一人100ルピー)と高いが、それなりに設備も整っているのでここに泊まることに決めた。
夜に冷たいシャワーを浴びるのはけっこう勇気のいるものだ。勇気のない私は、今日もまたシャワーを浴びずに寝てしまった。
ジャイプルもまた有名な観光都市だった。マハラジャの宮殿があるというシティパレス、古代の天文台であるジャンタル・マンタル、
ジャイプルのシンボル的存在でもある風の宮殿、アンベール城、ジャイガール要塞など盛りだくさんだった。
しかし、昨日に引き続き、今日も私は強行日程を考えていた。残り少ないインド滞在中にちょっと行っておきたい場所があった。砂漠の
町ジャイサルメールでは、ラクダに乗って砂漠を旅できるらしい。日本ではなかなか見ることのできない砂丘(鳥取砂丘でも見られるけど
ね)、地平線、たくさんの星などをぜひ見ておきたかった。砂漠に行けばきっと今まで見たことのないような無数の星を見ることができる
かもしれない。私の足はジャイサルメールに向いていた。
ただ、強行日程とはいっても、またこの町には戻ってくることになると思うので、あまり急がずにこの町を観光することにした。水野君
もいっしょに行動している。まずはマハラジャが今も暮らしているという宮殿(City
Palace)を訪れた。でっかい宮殿だった。世界一大きい銀の壷などもあった。マハラジャがどれだけ贅沢な暮らしをしているのかが理解できた。そして今もマハラジャはバ
ブリーな生活をしているというのだから実に羨ましい。たとえ本人が無能であったとしても、特権を先祖から譲り受けただけの理由で優雅
な暮らしができるとは。そういった身分制度を許容する宗教について、庶民はどう思っているのだろうか。
次に訪れたのが、ジャンタル・マンタル(天文台)だ。天文台といっても私には何がなんだかわからなかった。不思議な形をした建造物
がいろいろとあるが、どれをどう使っていたのかがよくわからない。なんとなく、星や太陽の位置を観察していたんだろうなということは
わかった。
それから風の宮殿を訪れた。通勤・通学の人が行き交うごく普通の道路に面してその建物は建っていた。ガイドブックの写真などでは立
派な建物のように見えるが、実際は実に薄っぺらいちゃっちい建物だ。かつて宮廷の女性達がここから町を見下ろしたらしい。こんだけ
薄っぺらい建物だったら風通しもいいはずだ。風の宮殿と名づけられた理由がわかったような気がした。
非常に暑かったせいもあって、のんびり休憩しながらいろんな建物を見てまわったので、もう夕方近くになってしまっていた。私はジャ
イサルメール行きのバスの発車時間まで公園でのんびり過ごすことにした。
水野君はというと、もうしばらくここでゆっくりしてからデリーに行くということだった。どうやら彼とはこのあたりでお別れのようで
ある。
今日が日曜日で銀行が閉まっているので、両替ができなくてルピー不足に悩んでいる水野君に、わずかばかりのルピーをあげて別れた。
旅の主導権を握り続けてきた私に、よく不平も言わずについてきたものだ。そのお礼の意味もあった。
ジャイサルメール行きデラックスバス※921:45発に乗るまでにはだいぶ時間があった。一人で行動すると
いうのは実に楽だ。なにより気兼ねなくいつでもどこでもトイレに行ける。下痢気味の私としては、二人旅だとどうしても相手のことが気
になってしまう。お腹の調子が悪くなったら、その辺に腰掛けて休憩したくなるが、友達の前でそんなことばっかりするわけにもいかな
い。水野君には悪いが、やっと一人になれてホッとしていた。
その解放感が影響したのかどうかはわからないが、深く考えずにバスの切符を買った。500ルピーを係員に渡し、おつりの110ル
ピーを受け取った。
しばらくして、バスのチケットをじっくりと眺めていると、
「バス代合計290ルピー」
と書かれていた。やられた!!!あの係員め!100ルピーだまし盗りやがった。あわててチケット売場に抗議に行くが、まったく相手
にされない。チケットを買おうとする客の行列ができていて、私を実に邪魔そうな目で見ている。売場の上には、
「注意!売場を離れる前にチケットと金額を確認して下さい。」
と英語で書かれていた。はぁ〜、うかつだった。店員がおつりをごまかすということはインドではよくあることらしい。銀行での両替
や、買物の時はそうならないように気をつけてきたつもりだったが、つい気がゆるんでしまった。バス代も知らずにチケットを買って、お
つりを確認しなかった自分が悪いのかもしれない。日本人が平和ボケしているのかもしれない。でも、やっぱりそんな野郎は大っ嫌い
だーー! むかつくー!
むかつく心を頑張って抑える私を乗せたバスは、ジャイサルメールへと走っていった。
※ 注
(9) デラックスバスとか言いながら、どこがデラックスなのかわかりませんでした。ま、しかし、こういう例は日本で
もあり、関西国際空港行きバスには「エアポートリムジン」という名がつけられていますが、知り合いのオーストラリア人は「あれはリム
ジンじゃない!ただのバスだ!」と怒ってました。
目次のページへ|旅の地図
|