バナーラス脱出

1999.3.5

 朝一番に並んで、列車の切符を予約しに行った。今晩発の便がとれ るかどうか心配だったが、なんなく予約することができた。切符を獲得した。
 さて、切符を買うだけですでに半日を費やしてしまった。すでにお昼。水野君は、
「暇だからガンジス川でも見に行きませんか? おかゆを作ってくれる日本料理屋も知ってますよ。」
 と主張した。おっ、そりゃあええ。以前よりはだいぶ下痢の回数も減ってきて、うんこは茶色い水から茶色い生クリームの段階へと移行 していたことだし、私が「待合室とか公園でずーっとボーっとしとこう。」と主張しても、彼は「こいつ何考えてんだ?」と不思議がるに 違いない。リクシャーを使えばそう遠い距離でもない。私たちはガンジス川に行くことにした。

 今日はどういうわけかむちゃくちゃ暑い。歩くとものすごく疲れてしまう。ガンジス川には来てみたものの、日差しが強くてあまり動き 回りたくない。チャーイでも飲んでゆっくりしてから、水野君ご推薦の日本料理屋で涼むことにした。
 水野君はおいしそうなものをたくさん注文していた。私はおかゆとジュースだけ。元気な水野君が羨ましい。おいしいおかゆが出てくる ことを期待したが、出てきたのは塩味のききすぎたまずいおかゆ。アツアツだったから、味をごまかして食べることができたような気がす る。この店の日本料理はまずい。

 今日こそは列車に乗り遅れないようにしなければならない。出発の1時間前からプラットホームに待機して列車の到着を待つことにし た。列車がどのプラットホームに到着するかも何人もの人に聞いてまわった。駅の総合窓口の人が言うには「6番か7番」、案内係らしい 人が言うには「9番ホーム」、ライフル銃を持った駅員(警官?)が言うには「7番ホーム」、ホームの掲示板によると「6番ホーム」。 さて、誰が本当のことを言っているのだろうか。6番の可能性が高そうだが、それも疑わしい。こうなったら列車が到着するたびに確認し てまわるのが確実なようだ。
 で、正解は7番ホームだった。ほぼ時刻表どおりに列車はやって来た。インドの列車ってこういうもんなんだろう。やっとバナーラスを 脱出することができた。ほっと一安心。

 私たちの席はもちろん二等寝台。一番安い寝台車。まだ明るいので寝ている人は誰もいない。右隣には水野君、左隣には名古屋の大学院 生、向かいの席には英語が得意ではないイタリア人二人と、その横に物静かな日本人女性一人。どうやら外国人旅行者ばかりかためられた ようだ。
 イタリア人二人が英語を流暢に話すことができないことがわかると、なんとなく親近感を持つことができた。お互いのたどたどしい英語 で、とるに足りない会話をした。
 しばらくして、イタリア人たちは通路の方をキョロキョロと見まわしながら、なにかリュックから取り出し始めた。パイプ、カメラの フィルムケースに入った黒い塊、そしてライター。車掌らしき人が通ると、それらの物を隠すようにしてカバンの下にしまってしまう。彼 らがこれから何をしようとしているのか、我々日本人の誰もが想像できていた。
 黒い塊を細長くして紙でくるんで、それをパイプに詰めこむ。それからライターで火をつけた。おいしそうに煙を吸っている。

 バナーラスからアーグラーまでは約500km。明日の早朝に到着する予定である。

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