1995.12.1 港北PA →  名神高槻バス停

 記念すべき初のヒッチハイク。
 今回、関東に来た目的は、クラブ活動の合宿で使うグライダーを埼玉県妻沼に運ぶためだ。しかし、私は大学の授業があるため、運んだ 後は東京観光をしてから、自宅に帰ることになっていた。今までもそうだったし、これからも関東方面に移動する機会がますます増えそう だ。移動するお金がもったいない! しかし学生には時間と無鉄砲という武器がある。というわけで、『進め!電波少年』に影響され、 ヒッチハイクに挑戦することにした。
 最初は東京I.C.で始めようとした。しかし、車の速度が速すぎるので、あきらめて横浜方面に電車と徒歩で向かう。やがて港北 P.A.にたどり着いた。
 あらかじめ用意したものはマジックインキのみ。ゴミ捨て場でダンボールを拾い、それに「大阪」と大きく書く。左手にダンボール、右 手に親指。期待と不安がいりまじっていた。

1台目
乗車地 東名高速港北パーキングエリア
(神奈川県横浜市)
降車地 東名高速駒門パーキングエリア
(静岡県御殿場市)
車種 乗用車
乗せてくれた親切な方 20代後半のカップル
乗るまでにかかった時間 30分

 朝の8時過ぎ。それほど大きなパーキングエリアではない。最初は もっと大きなパーキングエリアで始めればよかったのではないかと、待ってる間に不安になってきた。通る車の注目も集めている。なんだ か恥ずかしくなってきた。私は何をバカなことをやっているんだろうと思えてきた。
 そんな時、一台の乗用車が止まってくれた。
「途中まででいいなら乗る?」
 もちろん快諾。伊豆の温泉に旅行に行くというカップルが乗せてくれることになった。男性の方はヒッチハイクの経験があり、ヒッチハ イカーを乗せるのが好きらしく、これまでにも何人か乗せたことがあるそうだ。乗ってる間、休みなく会話が続いた。彼は大学時代、おお いに遊んで過ごしたらしい。途中180km/hも体験した。私は車には詳しくないが、スピードの出る車ということはわかった。別れ際 にはお菓子もくれた。
「遊べよ、大学生!」
 そんな言葉を残し、爆音を響かせながら車は去っていった。

2台目
乗車地 東名高速駒門パーキングエリア
(静岡県御殿場市)
降車地 東名高速磐田原パーキングエリア
(静岡県磐田市)
車種 4tトラック
乗せてくれた親切な方 20代のペンキ屋さん2人組
乗るまでにかかった時間 40分

 ペンキ屋さんのトラックが止まってくれる。中学卒業後にすぐペン キ屋さんになったという2人である。
「おれ、小学校しかまともに行ってないから、勉強全然だめ。」
 と言うわりには、けっこう稼いでいるようだ。学校の勉強はともあれ、自分に自信を持っているように感じた。感じのいい人たちだっ た。
 車は非常に汚い。ペンキ屋だから仕方ないが、シートベルトが使えない状態になっ ているのには困った。
 途中、彼らと一緒に仕事をしているリーダー格の男性とも合流した。彼らの助言により、いきなり「大阪」と提示するのはやめ、「名古 屋」と提示することにした。

3台目
乗車地 東名高速磐田原パーキングエリア
(静岡県磐田市)
降車地 東名高速上郷サービスエリア
(愛知県豊田市)
車種 大型トラック
乗せてくれた親切な方 23才トラック運転手
乗るまでにかかった時間 30分

 昼食後、ヒッチハイクを再開。童顔の運転手が乗せてくれた。
「日本人?」
 最初の質問が、それだった。どうやら私を東南アジアの人かなにかと思ったようだ。
 彼は、私が抱いている大型トラックドライバーのイメージを変えた。貧乏が故に、大学に行けずにトラック運転手をしているが、気の短 い運転手が多いこの業界が嫌いらしい。海外留学を夢見ており、毎年海外旅行にも行き、オーストラリアでヒッチハイクもしたことがある という。私に対して、留年するんだったら留学をするように勧めてきた。
 律儀な方であり、私の方が年下にも関わらず、終始敬語だった。

4台目
乗車地 東名高速上郷サービスエリア
(愛知県豊田市)
降車地 名神高速高槻バス停
(大阪府高槻市)
車種 クレーン付きトラック
乗せてくれた親切な方 40才くらいの男性
乗るまでにかかった時間 20分

 無口な方であり、それほど会話はしなかった。年齢差のせいもある かもしれない。
 私が、大学でのクラブ活動、グライダーの話をしたら、やけに詳しかったのでびっくりした。聞けば、20年ぐらい前に友人をグライ ダーの事故で亡くしているとのことだった。それ以上深く聞くのはやめておいた。
 途中、ジュースをおごってもらった。親切な方だった。

 朝の8:20から初めて、高槻バス停に着いたのが18:00。9時間40分かかったことになる。いろんな人と出会い、いろんな会話 を楽しむことができた。今回の結果では、渡る世間に鬼はいなかった。ただ、次はどうだかわからない。でも、きっとまたヒッチハイクを するだろう。


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