手作りの世界史実物教材

楔形文字が刻まれた粘土板



1.楔形文字の誕生と進化

 文字の歴史を語る上で欠かすことのできない楔形文字。人類史上初めてとされるこの文字は、古代メソポタミアで発明された紀元前4千年紀から西暦1世紀まで3000年以上にわたって中近東で用いられました。
 粘土板に葦(あし)のペンで楔(くさび)のような形をぺったんぺったん押しながら文字にしていくところから、楔形文字と言われています。
 ただ、楔形文字はある日突然誕生したわけではなく、次のような流れてゆっくりゆっくり形作られ、そして変化していったようです。

①トークン(1~3cmの粘土片)が古代オリエント世界で、計算、税や商取引の記録用として使われる。
②ウルクで絵文字の使用が始まる。
③絵文字が南部メソポタミアで普及する。
④縦書きから横書きへ
⑤絵文字から楔形文字へ
⑥文字数の減少
⑦楔形文字でアッカド語を表記
⑧楔形文字が古代オリエント世界に普及
(参考:池田潤『楔形文字を書いてみよう 読んでみよう -古代メソポタミアへの招待-』白水社、2017年、p.15)


 面白いのは、「④縦書きから横書きへ」「⑤絵文字から楔形文字へ」という変化です。例えば、楔形文字の変遷を示した以下の図をご覧ください。


 文字は左から右へ変わっていったことを示しています。
 一番上の列は、三角形に短い線で性器の形で表現された「女性」を意味する文字です。それがあるとき90度回転し、そしてまたあるとき絵文字が抽象化されていく様子が、左から右へ見ていくと分かると思います。
 二列目は、「山」を意味する文字です。
 そして三列目は、「女性」と「山」が合体して、「山の向こうから来た女」、つまり「女の奴隷」を意味するそうです。文字を組み合わせることで、概念も表すこともできたようです。
(同時に、この文字から、当時の女性の地位や扱いもなんとなく推測できますね。)
(参考:ジョルジュ・ジャン著、矢島文夫監修『文字の歴史』創元社、1990年、p.18)



.製作過程

① ホームセンターで、ヤコのオーブン陶土「工作用」を購入(600円ぐらい)。


② 鉛筆ぐらいの太さの丸い棒の先を斜めに切断。この棒をペンにします。

 


③ 今回は、池田潤先生の『楔形文字を書いてみよう 読んでみよう -古代ペソポタミアへの招待-』という本にあった楔形文字の文章を見ながら、ペンをペタペタ押して文字を作っていきました。





④ オーブンで焼きます。



あれ・・・、まだら模様で文字が判別しづらい・・・。


⑤ というわけで、文字を見やすくするためにアクリル絵の具で着色しました。



 

⑥ 完成!

作品1 「ハンムラビ法典の一部」

 

     もし、ある人が、
     (別の)人の子の目を
     つぶしたなら、
     彼(=ある人)の目を
     つぶすべし。 

 

作品2 「新アッシリア帝国センアケリブ王の六角柱碑文」の一部

 

 

作品3 自分の名前

 

試しに自分のネームプレートを作ってみました。私の名前がわかりますか?


 
【参考文献】

・池田潤『楔形文字を書いてみよう 読んでみよう -古代メソポタミアへの招待-』(白水社、2017年)
・ジョルジュ・ジャン著、矢島文夫監修『文字の歴史』創元社、1990年
・ルイ=ジャン・カルヴエ著、矢島文夫監訳『文字の世界史』河出書房新社、1998年