本物のダウ船(Wikipediaより) 私の作った実験用模型 これは、そのダウ船(その他帆船も含めて)がなぜ風上に進めるのかを目で見て納得してもらうために作った教材です。教室での実験が目的なので、水の上で走らせるのではなく、机の上で走らせるということを想定してタイヤをつけました。なにやら歴史の授業ではなく、科学実験のようになってきた感がありますが・・・ 1.(本物の)ダウ船の作り方 鉄釘を一切使わないのが特徴です。そして、材料のほとんどがココヤシの木です。ココヤシを削った外板に穴をあけて、その穴にココヤシ繊維で作った紐を通して縫い合わせた後、縫い穴と外板の隙間を樹脂、魚油(サメの肝油と鯨油)と焼いた石灰を練り合わせて充填します。マストはココヤシの幹から、帆布はココヤシの樹葉から、縄はココヤシの実を包む繊維などから作られます。まさにココヤシの船! ちなみに船乗りたちの日常食として好まれたのは、ココヤシ油、魚、コメをまぜたピラフ。飲み物はココヤシの汁。デザートはココヤシの果肉。これでもかってばかりのココヤシ。 1´.(模型の)ダウ船の作り方 ?ゝ磴?叫ぶ子どものミニ四駆(住宅展示場の景品なので0円)を分解。タイヤの部分のみ使います。 ?∩イ侶舛棒擇辰身帖雰鯀杆従譴稜兀爐鬚發蕕辰燭里韮葦漾砲鬚修海望茲察?丸環付きのねじ(150円)と鬼目ナット(157円)を取り付け。 ??マストは傘の骨(0円)を使用。傘の骨に布(0円)を縫いつけてから、マストを鬼目ナットに刺す。 ?せ鯵冏舛里呂靴辰海抜欖追佞?ねじをタコ糸で結ぶ。 ?ト弔肇織ぅ簓?分を輪ゴムでくっつければ、完成!!! とっても安くできあがりました。総費用307円。 2.季節風航法と貿易品 1世紀頃に書かれた「エリュトラー海案内記」には、インド洋の季節風交易についての記載があります。 カネーとエウダイモーン・アラビアーからの上述の全廻航を(昔の)人々は現在よりも小さい船で湾を廻りつつ航海していたが、始めて舵手のヒッパロスが、商業地の位置と海の状態とを了解して、大海横断による航海を発見し、それ以来インド洋で局部的に、我々の辺でと同じ頃に大洋から吹く季節風である南西風は(横断航海を最初に発見した人の名に因み)(ヒッパロスと)呼ばれるように思われる。 (村川堅太郎訳註「エリュトゥラー海案内記」中公文庫、p.137-138)
そして、ムスリム商人がこの海域に乗り出す10世紀頃には、三角帆をそなえ季節風航法に特化したダウ船が主力となってきました。季節風の利用方法と積荷は以下の通りです。
地図で示すと、風の向きはこんな感じ。 3.なぜ風上に進めるのか? しかし、季節風を利用するといっても、いつも風を後ろから受ける順風ばかりではありません。季節風航法では、複雑に変化する風や海流を巧みに利用する高度な技術が必要です。時には風上に進む必要も出てきます。そんな時はどうするんでしょうか? 以下の写真をご覧下さい。 というわけで、まっすぐ風上に進むことはできませんが、風上に対して45度の角度には進めるので、ジグザグ走行を繰り返しながら風上に進むというわけです。 今回のダウ船作製に関しては、ヨット部の顧問の先生に相談しながら作りました。帆船が最も速く進めるのは、真後ろではなく、真横から風を受けた時なんだそうです。 【参考文献・ホームページ】 ・村川堅太郎訳註『エリュトゥラー海案内記』中公文庫、1993年 ・千葉県歴史教育者協議会世界史部会編『世界史のなかの物』地歴社、1999年 ・門田修『海のラクダ〜木造帆船ダウ同乗記』中公文庫、1998年…ダウ船に乗った日本人の旅行記です。貞操の危機にあったり、食事や排泄で困った話なども含めて、現代のダウ船の様子がよくわかります。 ・日本ブローカート協会…ヨットの陸上版をブローカートといいます。タイヤのついた操縦席にウィンドサーフィンをつけて走ります。日本でもレースをやっているようです。私の作ったダウ船は実際には、このブローカートに近いですね。 |
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