手作りの世界史実物教材

イージス護衛艦「こんごう」

 

(ペーパークラフト。作りかけです)

 これは、世界史ではなく現代社会の授業で用い、自衛隊の海外派遣や日米安保の片務性について考える教材としました。
 かつて長崎県の高校で勤務していた頃につくりました。長崎は、原爆を投下されたがゆえに世界に非核化を呼びかける一方で、佐世保港は海上自衛隊とアメリカ海軍の軍事拠点でもあります。親が自衛官であったり、米軍施設で働いているという生徒も少なからずいます。左派勢力と右派勢力が一定数存在している。そんなイメージが長崎にはあります。まぁ、どこにでも左派と右派の対立はあるんでしょうが、2007年には核兵器廃絶を訴える長崎市長が暗殺されましたしね…。その佐世保港を母港としているのが、このイージス艦「こんごう」です。自分たちの地域の身近な問題としても考えてもらうのが、この教材のねらいです。もちろん世間には多様な価値観が存在し、右派・左派どちらかが絶対的に正しいということはないことを強調したうえで、生徒には自由に考えてもらうよう心掛けました。
 「こんごう」は、三菱重工業長崎造船所で建造され、1993年3月25日に竣工しました。そんでもって母港が佐世保基地。本当に長崎づくしの艦艇です。ちなみに衝突事故を起こした「あたご」も三菱重工業長崎造船所で建造。竣工後の「こんごう」は、テロ対策特別措置法制定後の2003年にはインド洋に派遣され、2007年にはハワイ沖で大気圏外(高度100km以上)を飛ぶミサイルを打ち落とす実験をやっちゃったりしてます。
 小説『亡国のイージス』やマンガ『ジパング』を読むと、そりゃあもう強いのなんのって。普通の船だったら、航空機やミサイルや戦艦や潜水艦が同時に攻めてきたら対処しきれなくなってやられちゃうんだけど、イージス艦の場合は、高性能レーダーで多数の敵を同時にロックオンして、頭のいいコンピュータが上手に同時迎撃してくれます。レーダーの索敵能力は半径300km以上、対艦対空ミサイルの射程は100km以上。例えるなら、野球のボールがいっぱい飛んできても、イチロー並の動体視力と、アインシュタイン並の頭脳の人間が、100個ある目でボールを見て、十数個のバットで打ち返す…みたいなとこでしょうか。敵はそう簡単にはイージス艦に近づくことができない。だからイージス艦が「世界最強の盾」って言われるんでしょうね。でも、そのうち「世界最強の矛(ほこ)」と呼ばれる兵器が開発されるような気もします。そしたらいったいどうなるんでしょうか? 中国の故事の「矛盾」を思い出します。
 ちなみに気になるお値段ですが、今なら、な、な、なんと1隻1200億円!

【参考ホームページ・文献】

へっぽこ・ペパモ工房 … ここの資料をもとに私は製作しました。
・福井晴敏『亡国のイージス』 講談社
・かわぐちかいじ『ジパング』講談社モーニングコミックス