手作りの世界史実物教材

クロスボウ(

 

 資料集からの引用

「クレシーの戦い
 百年戦争前期1346年の戦い。仏軍はハンドルをまわして弦を引きしぼり、引き金で射る弩を使用したが、操作にてまどり、英軍の集団戦法と長弓隊の前にあえなく完敗。長弓は2m近い木製で扱いも簡単、連射も可能であった。」

(『最新世界史図説タペストリー五訂版』帝国書院より)

 
クレシーの戦い(Wikipediaより)     ハンドル巻上式クロスボウ(Wikipediaより)

 速射性に優れたイギリス軍の長弓(ロングボウ)。それに対して命中率・貫通力に優れたフランス軍の弩(クロスボウ)。弩は貫通力を落とさずに弦を短くしているため、弦を引くのにとっても力がいります。


「けっこう力がいります…あ〜しんど…」

 というわけで、こりゃあすぐに矢を発射できませんね。でも、実は私の作ったクロスボウはそんなに力はいりません。生徒の前では敢えてしんどいフリをしています。
 イギリスのエドワード3世は、農民からなる弓兵隊に連日の訓練を義務づけ、給与面でも弓兵を優遇することで練度を高めました。フランス軍が時間をかけてちまちまと矢を放つ一方で、イギリス軍は空をおおわんばかりの矢の雨を敵陣に降らせました。

 授業では次のようなことを生徒に問いました。
「フランス軍が当初劣勢なのはなぜか?」
「なぜイギリスの長弓隊に負け続けたのか?」
「最終的にフランス軍が勝利したのはなぜか?」
「フランス軍が勝てたのは、ジャンヌ=ダルクのおかげだけ?」

 百年戦争を通じて諸侯や騎士が没落し、仏王シャルル7世が大商人と協力して財政再建をすすめ、中央集権化に成功。常備軍を整備し、フランスも長弓隊を育て、最終的にはイギリスを追い返すことができました。


 このクロスボウは大学に入ったばかりの19才の時に作りました。今まで出会ったことのない大きな大学図書館に喜び、まっさきに探したのが、クロスボウの設計図が載っている古い中国の史料でした。ちょっと怪しい兵器マニアですね。本人はエアガンの一つも持たない平和主義者ですのであしからず…。そしてなんとか史料を見つけることはできたものの、頭を悩ませたのは引き金の構造でした。充分な強度をもつ本格的な引き金を作ろうと思えば、それなりの金属加工の道具と技量が必要です。ホームセンターで売っているものでなんとか安価にできないものかと悩みました。貧乏学生なもんで。で、結局、T字金具、L字金具、釘、ボルト、ナットを使って引き金を作ることができました。良い子がマネするといけないので、詳しい作り方は書きませんが。
 ちなみに弓は剣道の竹刀、弦はワイヤーを使っています。射程距離は50m程度です。実際のクロスボウは300mくらいの射程距離があったというからすごいですね。やっぱり剣道の竹刀じゃ所詮この程度なんでしょうか。