 ”今より以後、必ず銅錢を用ゐよ。銀錢を用ゐること莫れ。” （『日本書紀』天武12（683）年4月壬申条）
１．貨幣の起源 〜物々交換の代わりに出現した？〜
「物々交換はいろいろと面倒なので、代わりに貨幣を使い始めた」と思っている人が多いと思いますが、実はいろんな説があるようです。 さて、以下の様々な見解をもとに、「”貨幣が物々交換の代わりとして出現した”とどの程度言えるのか」という問いについて考えてみると面白そうです。
２．日本の場合 〜使うお金を決めるのは、政府か民衆か？〜
今流行りの仮想通貨は、今後どの程度普及するのか。 もしかしたら、その答えのヒントは日本の貨幣史にあるのかもしれません。多くの人が使うお金って、誰がどのように決めたのでしょうか。以下に古代日本の貨幣の歴史をまとめてみました。 � ”曚箒笋�お金のように使われる。 当時、布は貴重品だったのでしょう。また、銀は「無文銀銭」といって、10gぐらいの丸い銀のお金で、線や文字が刻まれていないものが多かったようです。
�◆＼�府が新しい銅銭「富本銭」を使わせようとするが… 建物や道路を作るための時の賃金として、政府は銅銭「富本銭」で支払うようにしました。政府にすれば、「銅銭は銀銭よりも安く作れるぜ！ しめしめ。」ってとこでしょうね。そして、民衆が使いたがっていた無文銀銭の使用を禁止しました。（683年）
しかし、多くの人の反発があったのか、３日後には銀銭の使用禁止を撤回。
民衆は、政府が使わせようとする銅貨銭「富本銭」を使いたがらず、無文銀銭を使いたがったようで、富本銭は不人気のまま消えていきましたとさ。 �� 政府はあの手この手で「和同開珎」を使わせようとするが… それでもめげない政府（安い銅銭を発行して平城京を建てたい政府）は、新たな作戦を考え出しました。二段階の作戦です。 まずは銀の「和同開珎」を発行します（708年）。前回、民衆は銅銭を嫌がったので、今回はまず新しい銀銭を普及させ、無文銀銭を世の中から減らしていきました。 そしてある程度銀の「和同開珎」が普及したところで、銅の「和同開珎」を発行し、銀の「和同開珎」と同じ値打ちで使うよう命令しました。 しかし、これでもうまくいきません。あいかわらず民衆は銅よりも銀の「和同開珎」を欲しがります。 そこで政府がとった第三の作戦が、「銅銭を受け取って貯金した役人を高い地位につける」というものでした。これって、庶民にはどうでもよくても、役人にとっては出世のチャンスです。かくして銅銭が使われるようになっていったのでした。 �ぁ（儔修垢詁質�の価値 しかし、722年頃には、銅の「和同開珎」の価値は当初目標の50分の1に低下。政府は760年に「和同開珎」10枚分の価値があるとする「万年通宝」を発行しますが、次は物価が10倍に上昇するインフレが発生。さらには、民衆は「和同開珎」を「万年通宝」と同じ価値で使い始める始末…。民衆はちっとも政府の思ったとおりには動いてくれないのでした。 9世紀、10世紀になっても、新しい銅銭が発行されては、やがて価値が下がっていくことが繰り返されました。勝手に物の値段を上げないように見張る”検非違使（けびいし）”という警察官のような職業も作られたりしました。 �ァ〜�を発行しない政府、銭を使わない民衆 10世紀、ついに銅銭は銅そのものの価値にまで下がり、政府は新銭を発行することをやめ、民衆も品質の悪い銭を使わなくなりました。あ〜ぁ。 �Α〆討咫�布やお米で買い物。そして中国のお金を使用。 再び、布をお金代わりに使う社会が到来するかと思いきや、そこへ現れたのが中国（宋）の銅銭！ これなら貨幣価値が大きく変わらないという安心感から次第に民衆が使うようになっていきました。さんざん日本政府にダマされてきましたからねぇ。 以上、主に、井上正『ビジュアル 日本のお金の歴史 【飛鳥時代〜戦国時代】』（ゆまに書房、2015年）をもとにまとめてみました。続きが気になる人は、本を読んでみてください。子ども向けにわかりやすく書かれています。
３．製作過程
� �Adobe Illustratorで設計。作ったのは以下の貨幣。 ・[日本] 富本銭 ・[日本] 和同開珎 ・[中国] 永楽通宝 ・[中国] 布銭 ・[中国] 刀銭 ・[中国] 半両銭 ・[中国] 五銖銭 ・オランダ東インド会社貨幣 … 古代貨幣じゃないけど、ついでに作成。 そして、もっとついでに ・金印「漢委奴国王」 ・金印「親魏倭王」 ・足利義満の「日本国王之印」 ・織田信長の「天下布武」の印 も作ってみました。
�� 裏面をグラインダーや紙やすりを使って削り、厚さをもっと薄くします。
�ぁ〔攅�ボンドでコインの表面と裏面を接着。
�ァ｜綽А�
�Αヾ粟�！
【参考文献】 ・教科書『高等学校 改訂版 政治・経済』第一学習社、2012年 ・アリストテレス著、神崎繁他訳『アリストテレス全集17』岩波書店、2018年 ・アダム・スミス著、大河内一男編『世界の名著31 アダム・スミス』中央公論社、1968年 ・デイヴィッド=オレル著、角敦子訳『貨幣の歴史』原書房、2021年 ・片岡浩二「経済教育の陥穽――価値の理論から貨幣経済の理論へ」『横浜国立大学教育学部紀要』（1）、2018年 ・東野治之『貨幣の日本史』朝日新聞社、1997年 ・鎮目雅人「貨幣に関する歴史実証の視点――貨幣博物館リニューアルによせて――」『日本銀行金融研究所貨幣博物館 常設展示リニューアルの記録』日本銀行金融研究所貨幣博物館、2017年 ・坂本太郎、他『日本古典文学大系67 日本書紀 上』岩波書店、1967年 ・井上正『ビジュアル 日本のお金の歴史 【飛鳥時代〜戦国時代】』（ゆまに書房、2015年 ・高木久史『通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで』中公新書、2016年  |
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