手作りの世界史実物教材　草原の遊牧民ゲーム

草原の遊牧民ゲーム

【ゲームのルール】

①４人のグループをつくる。
②各グループに地図を１枚配る。
③各自は遊牧民の一部族として行動する。部族の貧富は馬と羊の頭数で決まる。最終的に馬と羊の合計数が一番多かった人が優勝となる。
④各自50頭の馬と150頭の羊を持って、スタート地点を選び、ルールにしたがって移動する。移動ルートは地図上に記入。４月から始める。
⑤各自、自分の色を決め、互いに違う色でルートを地図上に記入する。
⑥月ごとに必ず新しいマスに移動する。ただし、１ヶ月間で移動できるマスの数は１～３マスで、何マス動くか、どの方向に動くかは各自で決める。
⑥一度通ったルートは４月にならないと新たな草が生えない。
⑦市場は止まってよい。
⑧各月で止まったマスの位置によって、サイコロを振って「できごと」の指示に従い、できごとと馬・羊の頭数を記録用紙に記録していく。
⑨ゲームは２年間続ける。

【教材の解説】

　この教材は、『新・シミュレーション教材の開発と実践』に掲載されている「西アフリカの遊牧民ゲーム」を改良したものです。地理学習のシミュレーション教材である「西アフリカの遊牧民ゲーム」は、干ばつやハエの被害など自然条件に悩まされたり、市場での取り引きなどをしながら、家畜のエサとなる草地を求めて移動していく西アフリカの遊牧民の生活を疑似体験することを目的としています。その教材を世界史でも使えるように、なかでも13世紀のモンゴル高原の状況に近づけるべく、「寒さ」を強調した自然環境とし、さらに「春の出産」「部族対立」という要素も取り入れました。
　遊牧民は、春から秋にかけてほぼ一定のルートを遊牧し、冬営地で冬ごもりして家畜の繁殖に備えます。羊・ヤギ・馬などを飼育し、衣食住を原則として家畜に依存しています。しかし、毛皮・肉・乳製品を入手する事は容易でも、穀物や生活用品を安定的に入手することは困難です。そのため、オアシスの民や農耕民と交易する必要がありました。時には、騎馬技術による高い戦闘力を武器に、交易商人の警備を行ったり、農耕地帯を略奪することもありました。匈奴・突厥・ウイグルなどは、タリム盆地周縁部のオアシス都市を支配することで安定した生活を維持していました。
　モンゴル高原の遊牧民の生活を疑似体験するなかで、当時の遊牧社会の抱える課題に気づかせ、その課題をチンギス=ハンがどのように解決しようとしたかを考えるきっかけにしたいと思ってこのゲームを作成しました。

【指導計画】

◆単元名と授業テーマ
1.遊牧民とオアシス民の活動（テーマ：遊牧民はなぜ国家をつくったのか？）
2.トルコ化とイスラーム化の進展（テーマ：匈奴、突厥、ウイグルの共通点とは？）
3.「草原の遊牧民ゲーム」（テーマ：遊牧社会を生き抜くには？）
4.モンゴル民族の発展①（テーマ：モンゴルが大帝国を築けたのはなぜ？）
5.モンゴル民族の発展②（テーマ：フビライが東アジアに遠征したのはなぜ？）
6.モンゴル民族の発展③（テーマ：東西文化交流の背景と影響とは？）

◆「草原の遊牧民ゲーム」の目標
　当時の遊牧民が、気候条件に左右される不安定な生活を送っていたこと、部族対立という問題を抱えていたこと、そして戦力としての馬の存在に気づかせる

◆ゲームの次の授業「モンゴル民族の発展①」の過程

	教師の指示・発問	資料	生徒から引き出したい知識
導入	・ゲームを通じて気づいたことは？・短所を補うにはどうすればいい？ＭＱ：モンゴルが大帝国を築けたのはなぜ？（短所をどうやって克服した？）	感想プリント前回授業内容	長所：騎馬による高い戦闘力短所：生活が不安定。部族対立例）　市場で買う。　　　温かい所に住む
展開Ａ	ＳＱ１：なぜモンゴルを統一できたか？（部族対立をどうやって克服した？）・モンゴル統一までの流れを説明	教科書年表建国伝説	・千戸制による部族の解体
展開Ｂ	ＳＱ２：なぜもっと拡大できたのか？（生活の不安定さをどう克服した？）・チンギス=ハンからモンケ=ハンまでの征服事業を説明・ハン位相続争いと分裂を説明	前回授業内容教科書オトラル事件	・東西交易で繁栄するオアシス国家を征服。・ムスリム商人が統一国家の出現を期待して支援
まとめ	ＭＱの解答： ①千戸制による中央集権体制の確立 ②オアシス都市国家の支配 ③統一国家を期待するムスリム商人の支援・ＭＱを200字以内で論述せよ。

【生徒の感想】

「その時の天気とか草の生え方によって遊牧民の生活は豊かになったり貧しくなる。とても厳しい世界で生きているんだなと思った。」
「他の部族の動きを予想して、ぶつからないように動き、羊を増やすことに決めたことがよかった。自分の部族の方針を決めた方がよい。」
「寒さを考えずに市場を目指したら、寒さで羊がめっちゃ減った。寒さはアカン」
「二年目から争いが増えそう。一年目は平和。」
「戦争をすれば簡単に力をつけることができるが、リスクも大きい。逆に穏やかに過ごすと力の変動は少ないがリスクがない。」
「遊牧民の生活がわかった気がした。実際に闘争とかあったら、大変だと思った。」
「市場でじっとしてた方が有利だと思った。あとみんなの羊・馬の数を見て、チャンスをうかがって攻撃をしかけてみるっ!!（←ひでぇ）」
「どうやって別の部族に会わないようにしていたのだろうと思いました。」
「実際にこういうことが起こっているなら、そこで生きている遊牧民はスゴいと思った！」
「モンゴルは寒いところっていうイメージが強いので、寒いところで生き物を飼うことに大変だなと思った。」
「ルールがよく分かりませんでした。でも楽しかったです。進む方向とか考えて、周りの人の位置とかも確かめながら進まないといけなかった。」
「馬じゃなくて羊を増やした方がよかった。」
「寒さの影響を甘く考えていた。」
「寒い時期には下の方にいる。」
「牧草不足を避けられなかったら市場とかで逃げる。」
「運まかせの点もあるが、やはり将来を見通す力が必要だと判った。」
「闘争が起こったうえにひどい寒さでほとんど死んだ。」

【ダウンロードできます】

　ゲームの説明書およびゲーム盤
　（右クリック→「対象をファイルに保存」）
　（Excelで作成していますので、「できごと」の設定を変更して使うこともできます）

【参考文献、ホームページ】

・山口幸男『新・シミュレーション教材の開発と実践　―地理学習の新しい試み―』古今書院、1999年
・東豆社会科ネットワークサークルゆい